ニュース

進学通信2020

 

【学習意欲向上のために

  大学入試の出題形式におきましては、記述式導入に関して混乱し、延期が表明されました。

形式の論議は国策と経済界の要請に従う他はなく、私達は与えられた学習内容に対して、

いかに意欲的に学び、立ち向かうかに力を集中することが肝要です。

 入試は選抜試験という特性上やむを得ず、多くの細かな知識や難解な問いが出題されます。

意欲的に学ぶためには、同時並行して自然法則や社会構造に迫る大局的な理解を目指す必要があると考えます。

複雑に見える事象が、シンプルな原理で理解できたり、断片的な知識が統合されたりする経験が、学習の強力な

モチベーションになるのではないでしょうか。

 高等教育の最終目標が、「利潤追求のための生産性向上」にあるのか、それとも「国家と社会の健全な関係を

創り出すために批判的思考力を高める」ことにあるのか、そのバランスを取りつつ、今後も入試改革が進められて

行くと考えられます。

 

【上質な日本語を活用する】

  学習の質を向上させるために、英語早期教育を尊重しつつも、一方では日本語力を駆使した理解力の向上を

目指す必要があります。

  「できる限り英語で」という日本語に劣等感を感じる風潮の中、素早い理解のために「日本語で情報を取り

学習できるものはまず日本語で」という学者やジャーナリストの意見も見られるようになりました。

明治以来これまでに蓄積されてきた日本語での西洋学問の蓄積の価値(先人の努力)も再確認されています。

自国語で高等教育まで学べる国は少数であるようです。

  日本語を軸に他言語の論理構造を分析し、各教科の理論を深く学んで行く。

私個人としては、日本語でのこれまでの学問を尊重し、美しい日本語の力を信じたいと思います。

 

参考文献

「オックスフォードからの警鐘」苅谷剛彦  

「中央公論2017 英語1強時代 日本語は生き残るか」言語の植民地化に日本ほど無自覚な国はない

「中央公論2020 2050年の世界地図」英語入試ショック 

「中央公論2020 入試大混乱」教育改革神話を解体する

 

 

 

 

進学通信2019

 【英語早期教育と国語力】

グローバル経済に対応する言語として、英語の早期教育が熱を帯びています。外国人講師や会話重視の指導により、子ども達の英語力が飛躍的に向上することが期待されます。

現在までのところはまだ、学校での指導は文法中心のように見えますが、今後の変化が注目されます。当教室における英語指導は文法中心ですが、これまでの指導経験から、英語力は国語力に大きく比例していると実感しています。国語力が優れている場合は、中学生で英検2級取得のケースもあります。英語力よりも、英語を理解する国語力が重要です。

日常的に活字に慣れ親しみ、英語と日本語の構造の違いを比較しつつ論理的に考えることができるか否かが英語力を左右しています。一方で、「読解力」中心から「表現力・記述力」中心の指導へ、指導者側の力量も問われています。

【機械語に必要なプログラミング的思考】

2進数で認識するコンピュータを人間と媒介するプログラミング言語と、その処理手順であるアルゴリズムを論理的に導き出す「プログラミング的思考」習得が推進されています。日本が提唱する未来社会のコンセプト「ソサエティ-5.0」構想に向けて、大人にも子どもにも必要とされる思考として注目されます。

「ソサエティ-5.0」は、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」と科学技術基本計画において定義されています。

国際競争のための英語と、AI時代に対応するためのプログラミング的思考の習得が、教育現場の主流となりそうです。いずれの習得も、母国語で深く物事を考えることから始まるのではないでしょうか。

【付記】

デフレ脱却に端を発した異次元金融緩和による株高と円安で、多国籍企業の業績は好調である一方、財政赤字による社会保険料上昇、低金利と物価高の影響で、国民経済は不安が増しています。このような中、上記のような未来社会の構想を掲げて経済成長の可能性が模索されています。教育格差・学校間格差による分断を乗り越え、経済成長を導く次代の若者の育成が求められています。

参考文献

「IoTとは何か」坂村健

「教養としてのプログラミング的思考」草野俊彦 

「金融緩和のもとでの国債リスク」柴崎健     

 

進学通信2018

【平成の構造改革】

まもなく平成が終わろうとしています。冷戦終結からこれまでの30年、世界のグローバル化の中で「IT革命」「金融ビックバン」「規制緩和」「成果主義」などの旗の下、日本経済の効率化のために様々な改革が行われました。銀行の統廃合と企業経営の合理化で、メインバンクと株式持合いを中心とした「日本的経営」と年功序列・終身雇用制度が変化しました。

証券市場の株価変動を受けにくい経営から、株価変動をより意識した株主重視経営へと転換される中で、長期的視野に立った研究・技術開発をいかに維持するかが課題となります。今後はAI・IoTの発展が、世界経済の投資と消費を牽引します。

 

【アメリカ一極経済のゆらぎ】

ドルを基軸通貨としたアメリカ一極経済が、中国・ロシアなど大国の巻き返しにより多極化しています。また大国の利害が衝突し、中東・シリア情勢が混迷しています。条約交渉・経済取引は国力に左右されるため、北朝鮮の軍事力による駆け引きと対話が続いています。そのような中で、平和国家として歩んできた日本の立ち位置が問われています。

   

【グローバリズムの異なる見解】

「グローバリズム」については識者で見解が分かれています。

「規制緩和で国境を低くし、国際貿易と国際金融取引の更なる発展・深化を図ることが経済成長につながる」というグローバル化を推進する立場や、

「国境こそが多様性を生み出し、貿易も促進する。各国の産業技術・伝統・文化を保護し、過剰な国際金融資本の移動に警戒しなければならない」、「グローバルなバブルの生成と崩壊の影響を極力避けるために、内需拡大と自給率の向上を図らなければならない」等のグローバル化に慎重な意見もあります。

 

【入試改革の中でも変わらない知識を求めて】

「思考力・判断力・表現力」養成を掲げて、高大接続入試改革が進行中ですが、従来型の学習を「暗記偏重」として切り捨てることもできません。各教科の基本は変わらないはずですし、豊かな知識の土壌がなければ創造もありません。説明能力や記述力が要求されることを考慮に入れつつ、正当な勉強を続けることが大切です。

 

参考文献

 「世界に負けない日本」薮中三十二  「国難の正体」馬渕睦夫  「バブルの死角」岩本沙弓   同志社商学 

 

進学通信2017

【グローバル人材育成教育の進行と反グローバリズムの動き】

現在周知の通り、産業界の要請と国家予算重点配分の見地から、グローバル人材育成を掲げ、英語教育の早期化・高大接続入試改革が進行しています。

一方、国際社会においては、反グローバリズムの動きも顕著に見られます。グローバル化を推進してきた米国において、グローバル化を告発する大統領が誕生しました。2017年1月20日に就任した第45代合衆国大統領ドナルド・トランプ氏は就任演説において、以下のように述べています。

「私たちは世界の国々との友好と親善を追求して行きますが、それは自国の利益を第一に置くことはすべての国の権利だ(It is the right of all nations to put their own interest first)という理解のもとにそうするのです。私たちは私たちの生き方を他人に押し付けようとしているのではなく(We do not seek to impose our way of life on anyone)、むしろ一つの光輝く手本として示そうとしているのです。私たちは皆が後に続けるような光明となるのです。」

「私たちは2つの単純なルールに従います。アメリカ製品を買い、アメリカ人を雇う(buyAmerican and hire American)ということです。」 (トランプ就任演説より)

メディアの評価は厳しいですが、実際の演説を読むと印象は変わります。トランプ大統領は他の国々にも国益の追求を認め、自立した国同士で友好関係を結ぼうとしていると考えられます。日本においても、生産の海外移転による国内空洞化や、金融資産運用劣勢による長期経済停滞を考えれば、国内生産重視の動きも生じて来るのではないでしょうか。またグローバル化が進展すればするほど、日本独自の歴史や文化が重要となり、科学的発展のためにも、思考を深めることができる日本語の価値を忘れてはならないと考えています。

【英語について】  

京都私塾連盟・研究部会において、中学英語に関し、難易度が増していることが話題になっています。学年が上がるにつれて教科書本文からの出題率が下がり、地域差はありますが、より思考力・表現力を重視した問題が多く見られるようになりました。単純な暗記では通用しないため、対策が検討されています。

英語力の背後に国語力(日本語力)がありますので、英語早期教育だけにとらわれず、幼少期からできるだけ読書などで活字に触れることが大切です。国語力と英語力は確実に比例関係にあります。

【数学について】

数学に関しては、中学・高校に進むにつれて抽象度が増し、直感的理解が困難になります。高校生の学習は、解法の暗記が主体となっています。

直感的に分からない帰結を導けるからこそ、数学の強みがあるとも考えられますが、公式の意味が分からない最初の段階で、文系の学生さんは興味を失ってしまわれるのではないでしょうか。

小中学校の算数や数学が、高校数学の準備になっていることを踏まえると、高校での学習を見据えた指導が必要であり、また可能な限りの直観化が課題となります

 

 

進学通信2016

2020年度大学入試改革】

2020年に向けて、「グローバル人材」の育成を掲げ、大学入試が大きく変わります。「知識の暗記」よりも、「思考力・判断力・表現力」が重視されます。その影響を受け、小中学校の教育内容も変化します。今年度は中学校で改訂教科書が使用されます。与えられた選択肢から正しい解答を選択することは勿論大切なのですが、今後は解答に至る筋道がより重視されることになります。このことは、より深く物事を考えたり、社会で必要となる周囲との合意形成や、必ずしも答えはない課題に立ち向かうことにとって大変重要であると考えられます。具体的に文部科学省は、国公立大学に今後目指す方向として三類型を示しました。

① 全学的に世界で卓越した教育研究を推進する大学(世界水準)

② 専門分野で世界的な教育研究を進める大学(特定分野)

③ 地域活性化の中核となる大学(地域貢献)

各大学は自らこの三類型のうちの一つを選択しました。また合わせて文系分野の縮小あるいは廃止が求められています。

【理系重視の制度改革】

上記の制度改革に関して、文系分野からの批判がありました。背景として、1000兆円を超える国家債務による財政悪化のために、理系分野に重点的に予算を配分しようという国家の思惑があるためです。理系の深い専門知識だけを重視するのではなく、幅広い視野を持つ文系的な教養の価値を維持することの重要性が議論されています。実務面では、教科の枠を超えた試験問題作成の困難さや、記述式問題の採点時間等が問題となっています。また選抜試験という特性上、客観的な評価基準も問題となってくるでしょう。

【学習意欲を高めるために】

グローバル競争の激化により、義務教育で求められる教育内容が高度化し、受験戦争も早期化しています。学習意欲を高めるためには、徒に難解な選抜試験問題を追いかけるのではなく、広く社会や経済を見渡し、自然や科学、歴史や文学を同時に探求することが大切なのではないでしょうか。試験は通過点に過ぎず、飽くなき知識の探究が求められています。

 

進学通信2015

大学入試制度が変わります

2020年に向けて、大学入試が大きく変わります。グローバル社会を勝ち抜ける「グローバル人材」の育成が目標とされています。まだ全容は明らかではありませんが、「合教科型」という教科の枠を越えた出題が話題に上っています。創造性を重視したかつての「ゆとり教育」、その反動の「脱ゆとり教育」、そして今回の「グローバル人材の育成教育」へと、小・中学校を巻き込んで教育制度が変化しています。今後の改革の流れで普遍的な制度は生まれるでしょうか。

経済的背景

80年代後半から90年代初頭にかけてのバブル経済とその崩壊(株・土地などの資産価格の上昇と下落)により、90年代から現在に至るまで失われた20年と言われる長い経済停滞が続いています。この経済不況から脱却するため、国家は財政・金融政策を弾みにして経済成長を実現しようとしています。経済を牽引するものは企業の設備投資と技術革新です。科学など様々な分野で技術革新を生み出し、広く世界の市場に向けて経済活動を展開できるような人材の育成を目指しています。経済成長への貢献が主眼です。グローバル化はアメリカの世界戦略であり、日本においては少子高齢化による国内需要の縮小による必然的な経済現象です。経済のグローバル化が進む一方で、政治的にはナショナリズムの高まりで、国際情勢は不安定化しています。

展望

これまでの教育は効率を求めるあまり、巨視的に物事をとらえる教養が身につかなかったという識者もいます。断片的な多くの知識のつながりを理解することが困難であり、学習意欲の低下が見られました。今後の教育がどのような方向に向かうかは定かではありませんが、義務教育でも学習内容が高度になるので、ますます学力格差を生む可能性があります。学習意欲を高めながら、いかに勉強に立ち向かうかが課題です。